2011年11月5日

plan B定期上映会

「非在」の言葉を明るみへ
大場ひろみ(ちんどん屋・『チンドン―聞き書きちんどん屋物語』著者)

何故ちんどん屋が「山谷」の上映の場で語るのか、私にも必然性を強調できるような言葉はないのですが、これだけは言えるなと思うのは、ちんどん屋を始めた人々が、どうでもいい瑣末な存在として見られて、いろいろな歴史や文化、芸能、職業検証の文脈でまったく省みられなかったことです。庶民芸能、民俗学の対象からも零れ落ち、片手で足りるほどの僅かなルポライターや民間研究者が書き残したに過ぎませんでした。
たまさか私がちんどん屋の世界に入り、諸先輩の聞き書きを始めてすぐに気がついたのは、彼らが言葉を残せないがゆえに、まるで「無い者」かのように扱われ、無視されているすべての人々のうちの一人であることでした。「山谷」の人々と同様に、彼らの言葉に耳を傾ければ焙り出されてくる、支配者の側でない歴史、生活、今の日本の状況へと繋がる点と線が見えてきます。
私の本も「山谷」の映画のように、見えなくさせられているものを見える場所へ置き換え、そのような人々を繋げる役割まで果たせたらいいなと思い、今回お話しすることにしました。

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