2022年 9月10日

ドイツ・カッセルで何が起こっているか?
      ― 「ドクメンタ15」と、排除の論理

トーク : 三井峰雄(自営業)

いま、ドイツのカッセル市で開かれている国際芸術祭「ドクメンタ 15」が、「反ユダヤ主義」の問題で大いに揺れている。6 月末には、インドネシアのタリン・パディが展示した〈人民の正義/ People’s Justice〉が「反ユダヤ主義」の烙印を押され、その場から撤去させられた。タリン・パディはスハルト政権時代に、独裁に抵抗する美術運動を繰り広げた集団で、〈人民の正義〉は世界史的な国家暴力の暴圧に抗した8×12メートルの巨大アジテーション・バナーだ。
この「反ユダヤ主義」追及の動きは、ドクメンタの開催以前からすでに始まっていて、反対団体(反ユダヤ主義反対連盟)の活動が切っ掛けとなって1月のプレイベントが中止になり、またパレスチナ関係の展示場の壁にヘイトの落書きが残されたりした。こうした状況に対してドイツ内のジャーナリズムは、表現を擁護する覚悟を見せないばかりか、反対に反ユダヤ主義の「烙印探し」に奔走しているようだ。
「ドクメンタ」は、第二次世界大戦中にナチ政権によって「退廃芸術」として排除されてきた美術作品をあらためて再評価しようと、1955 年に開始された。その意味でこの事態は、そのような歴史を正面から受け止め、それとは違う歴史を作っていこうとした「ドクメンタ」自体への裏切り行為と言えるのではないか。そして、それはまた、同時代を生きる私たちにとっても無関係な 問題ではない。
今回の〈ミニトーク〉では、「ドクメンタ 15」から招待され、パレスチナ関係の映画を上映してきた三井峰雄さんを招き、現地
の最新情報も交えて、「いったいカッセルで何が起こっているのか、問題の本質は何か?」を報告してもらいます。

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